夜の声/昼の耳朶 風に息を託す

制作: 2015年
インクジェットプリント
撮影場所: 愛知県新城市 鳳来寺山

昭和10年6月の夜、鳳来寺山中でNHK名古屋放送局の人々は大きな集音器を闇夜に向けていた。その晩の実況放送がきっかけで、それまで仏法僧という鳥によるものだと信じられてきた鳴き声は、別の鳥-コノハズクの鳴き声であることが明らかになり、鳥類学史上大きな出来事となった。 現在、鳳来寺山では聴かれなくなったが、かつてこの山に響いていたコノハズクの声は特別な美しさをもっていた。それは、この山の地形や、頂付近にそびえる「鏡岩」と呼ばれる松脂岩のガラス質の成分が、その声を反響させ、絶妙な倍音を生み出していたためだと言われている。
作品は、もともとの聴く対象や聴かせる対象を欠き、時代や時間のすれ違うものたちから構成され、かつて山中で聴こえていた音への想像を促す。
※「見ることのかたわら」出展作品
会場では、昭和10年6月当時のラジオ放送の録音(岡田孝一氏所蔵)を流した。

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