川を染めとる/日次のフラフ

制作: 2018年
HD video, sound, 33分38秒

フラフとは、高知県東部で、男児誕生を祝うため、端午の節句に揚げる旗のことである。この時期、民家の庭には柱が立ち、桃太郎や七福神など縁起のよいモチーフとした鮮やかな旗がはためく。地域には、物部川土佐堰から流れる豊富な井水を利用してフラフをつくる染色工房が今も残っている。 私がこの土地に訪れたとき、地元の人々は物部川の思い出、とりわけ川の色について話してくれた。ダムを多くもつこの川は、時代、天候、そして地域に暮らす人間の記憶によって、さまざまな色彩として語られた。  この経験は、一枚の真っ白のフラフが工房を飛び出し、地元の人々の食事や労働、睡眠などの場で使われ、しだいに川の色に染まっていくというイメージを私にもたらした。映像の中で空高く揚げるフラフは、川と共に生きる人々の日常を讃えている。