発話とブドウ/Utterance and Grapes

制作: 2018年
映像(2チャンネル、サウンド)、ブドウの蔓、ハンカチ11’05”

<ステートメント>子どもはだいたい一歳前後から言葉を覚え、話し始めるという。左側の壁に映し出された映像のなかの10人の子どもたちは、時々、ぶどうを頬張りながら、何かを発見したり、まわりのひとの口真似をしたり、自分に注意を惹きつけたりするために、声を発する。すると右側の映像のなかで、ひとが紫色のハンカチを干す。ビルの屋上でいっぱいに吊るされたハンカチは風に揺さぶられ、あるいは自ら暴れているかのように、強くはためく。
初めてDungeonを訪れたとき、天井が低い展示空間に立って、ぶどう棚の下にいるような感覚を覚えた。そこで生ったぶどうが、遠く離れた場所の子供たちのもとに巡り、そこで発せられる言葉は、ぶどうの皮のように吐き出され、また見知らぬ遠くの屋上で、濡れたハンカチとして干され、そこに吹きぬく風によって地下室に戻ってくる。そんな妄想の一巡を、世界の分類をほかの誰かに預けない為のひとつの小さな抵抗として提示する。
※当時1歳前後のお子さんとそのご両親に、撮影でご協力いただきました。