制作: 2023年
展覧会: そこに山があるという嘘/ART in 鳳来寺山ろく/旧門谷小学校(愛知) 撮影:早川純一、鈴木孝幸
日頃ランチルームとして使われる部屋には、ベージュの敷物、この地域の地質図[設楽盆地地質略図, 林唯一, 鳳来寺山自然科学博物館蔵]をプリントした枕、バクの好物のマテバシイ、ネズミモチ、ヤマモモの苗木、鉢に隠したスピーカーを配置し、まどろみを誘うような音(《somnilogue and ancient tapir, a version for installation of Yuka Yamato》 制作:佐藤実 -m/s)を流す。観客は寝転んで、くつろぎながら映像作品を見る。
映像作品は、この地域で国内では珍しいバクの化石が見つかったことから、博物館や動植物園、研究者への取材をもとに、古生物のバクから現代のバクまでの「移動」の変遷を辿るもの。それを見た観客は、枕や苗木、ケージの意味や関連性に気づき、鳳来寺山をはじめとした、周辺の自然に対する新しい見え方を獲得していく。
グラウンドには、車輪のついたケージの作品を展示。室内から見える位置にある。
緑色に塗装されたこのケージは、動物の輸送箱、箱罠の構造を模した車輪と柵の扉がついた作りになっている(w1170Xd2320Xh1730~2740mm)。
扉の高さは段階的に変えられ、取り外しも可能。展示初日の朝、グラウンドでケージを移動させ、地面に轍をつくった。
人差し指として
制作: 2023年
筆、銀糸、その日の天候によって開け閉めされる掃き出し窓
展覧会: そこに山があるという嘘/ART in 鳳来寺山ろく/旧門谷小学校(愛知) 撮影:早川純一
素材: 声、ぶどうジュースの入ったグラス、テキスト(Universal Declaration of the Human Rights: UNITED NATIONS/和文:外務省)、ガラス、椅子
第二次世界大戦が終わり、1948年に世界人権宣言*が採択された。
その時、生き残っていた全てのひとたちは、その宣言が呼びかける共同体に含まれた。その後、生まれてくるすべてのひとは、時に、名付けられるよりも早く、その共同体に含まれていく。
「All human being」から始まる全30条の中で、「everyone」は何度も繰り返される。格式高く面白みはないその宣言は、その執拗さや厳格さが網の目をつくる。そこをすり抜けて、ふたたび悲劇が繰り返されないように、その網の目から誰かが落ちてしまわないように、本当にすべてのひとを「包括」することを目指し、「everyone」を重ねる。